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作られた「自白」は無実を語る
なぜ無実の人が虚偽の自白などするのか
 無実の人は、自分が犯行を犯していないこと、そして自白が虚偽であることを最もよくわかっています。したがって、死刑になるかもしれないということを、現実のこととして認識することができません。

 だからこそ、後で裁判官に対して本当のことを話せば、裁判官は自分の無実をわかってくれるはずだと信じ、目前の苦しみから逃れるために、虚偽の自白をしてしまうのです。袴田さんも、自らが作成した「上告趣意書草案」の中で、苛酷な取調べから自らの生命を守るために自白してしまったのだと訴えています。

裁判所も自白強要を認め証拠から排除
 逮捕されて20日目の9月6日に「自白」するまでの取調べは、8月の猛暑の中、平均1日約12時間にも及ぶ連日長時間の苛酷なものでした。その上、警察は便器を取調室の中に持ち込み、捜査官の見ている中で排泄をさせるという、袴田さんの人格自体を否定するようなひどい取調べを行ったのです。そのため裁判所も45通の「自白」調書のうち44通は違法な手続によるものとして排除し、証拠として採用されたのは9月9日の一通のみでした。

 「自白」の内容は、パジャマの上に雨合羽を着て侵入し、合羽を途中で脱いで犯行を行い、放火後工場内の風呂場でパジャマを洗った、などとなっていました。

 ところが、その後「自白」と矛盾する5点の衣類が出てきたため、有罪判決を下した裁判所すら、犯行着衣がパジャマであるとする「自白」には事実に反する部分が多いことを認めざるをえなかったのです。

 しかも、新証拠により、裏木戸は通る事ができず、被害者にはクリ小刀ではできない傷があったとされるなど、自白の内容はことごとく事実に反することが明らかになったのです。

作られた「自白」は無実を語る
 真犯人の自白と無実の人の強制による「自白」とは、犯行体験の有無により自ずから供述にその違いが現れてきます。供述心理の専門家は、袴田さんの「自白」には、「無知の暴露」が含まれていると指摘しています。すなわち、無実の者が、自ら「犯人になって」想像で語った自白には、その自白内容自体に、その当人が事件のことを何も知らないという兆候が現れるのです(「浜田鑑定書」)。袴田さんの「自白」は、次のような点から、無実の人が強制され、取調官に誘導されてできた「自白」であることは明らかであるとされています。

a 真犯人であれば、全面自白したあとに嘘をつく理由はないにもかかわらず、例えば、着衣や殺害順序や動機など、犯行の筋書きの核になる部分に「嘘」がふくまれていたり、変遷していたりする。

b 真犯人なら間違えようのない事実、例えば金袋の形状や死体の位置などを間違えており、このことは犯行状況について袴田さんが無知であることを暴露している。

c 真犯人のみが知っている「秘密の暴露」が全くなく、取調官が知り得た情報で誘導できる内容ばかりである。

袴田事件現場見取り図
上の見取り図はブックレット「はけないズボンで死刑判決」より引用(p.10)

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